2008年09月17日 (水) | Edit |
宇野千代著「天風先生座談」二見書房より (68)


秘密書類が本箱だとか本棚だとか、いれものに入れて
ありゃ、これはことが済みます。それだけちょうだい
すればいいんだから。

たいていの秘密書類という奴は、むこうの当該軍人が
ポケットの中に入れちゃいますので、これがこまるん
ですよ。

それを、こういう大勢の中で、てんやわんややっている
なら、それを抜きとることも出来ます。


これはね。戦地へ行くまでに、陸軍大学のスパイ養成室で
もって、みんなおそわるんですよ。ですから、私は食うに
こまったら、そいつをやればすぐ食える。

さすが、まァ、先生は何でも出来るわ、と言われたけれども、
スリと泥棒が出来るとはいわれなかったので、喜んでいました
けどもね。いま、考えると。さあ、人のふところの中にあるも
のをちょうだいするんだったら、どうしたってその人に、

無条件でこっちに渡してくれるような状態に、なってもらわな
ければならないでしょう。そのときには余儀ないことですもの。
ちょいと息の根、とまってもらわなければならない。

こんなやさしい顔をして、そういうことをやって来たんですよ。
昔のことだから、どうぞご勘弁を願います。それを、大きな罪
悪だということを、私は知らなかった。

お国のために、いいことばっかりした人間じゃないか。その人
間が、大したご褒美もいただかないで、戦争がすんだあげくに、
病にもことによりけり、こんな酷い病いに俺をかけるとは、
この世に神も仏もあるものか、と思った。

とにかく、死ぬことよりもつらい苦痛に耐えかねて、死ぬなら
死んじまえ。けれども、死ぬまでにこの苦痛をすこしでも軽く
してくれる人が、これだけ広い世の中に、生命に関することを
研究している学者も多いんだから、一人くらいはいるに違いな
い。

これで、まァ、学問ぎらいの私が、それからは偉い人の本ばか
りだけでなく、学問を重んずる人間の生命に関する本は、片っ
ぱしから読みました。

そうして、医者にならなければ駄目だ、と思った。結局、要す
るに、人を治す医者になるつもりで医学を勉強したのではなく
て、自分の体を自分が治すには、自分が医学を習うにかぎる、
と思ったわけです。



次回につづく


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ジャンル:心と身体
コメント
この記事へのコメント
洗脳 Brainwashing
特定の主義・思想を持つように仕向ける事、またはその方法。

洗脳はマインドコントロールとは違い、主に物理的暴力(拷問のほか、
薬物の利用や電極を埋め込む手術を含む)あるいは精神的圧迫
(罪の意識の植え付け)などの強い外圧があるとされる。

マインドコントロール(英 Mind control)とは、強制によらず、
さも自分の意思で選択したかのように、あらかじめ決められた結論へ
と誘導する技術、またその行為のこと。


戦争では、洗脳やマインドコントロールはどの国でも研究され利用され
ました。ましてや軍事探偵の教育となると徹底的にBrainwashingされ、
植え付けられたに違いありません。天風先生はその被害者であったのですね。



2008/09/17(Wed) 21:22 | URL  | ろくろく #-[ 編集]
大きな罪悪とは知らなかった・・
教育とはおそろしいものですね。
鏡のように雲ひとつない心に殺人を犯してもそれは人びとを救うためなのだと教えたら、罪悪感なく出来る。反対の立場に立ち、自分の大切な人が、そういう風な人に殺されたときも この方たちは 心に痛みなくおられるのだろうか????
戦争は、人の心をまず壊していかなければ、できないことなんだと思う。だから戦士はなるだけ若く何にも染まっていない純粋無垢な人のほうが、染まりやすく扱いやすいのだと思います。
むごたらしいことです。

たしかに鏡は善悪なくすべてを映し出すけれども、世界中には教えられもしないのになんだか共通の大切な決まりごとがあるように思います。とくに赤ちゃんはそれを見抜く力があります。
2008/09/17(Wed) 07:38 | URL  | やまんばさん #-[ 編集]
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