2008年09月07日 (日) | Edit |
H. サダーティッサ著 桂紹隆・桂宥子訳「ブッダの生涯」立風書房より(38)


チンチャーは派手な色の外套に身をくるみ、
香水の匂いをプンプンさせ、手に花輪を持って、
毎日サーヴァッティからジェータヴァナに向かって
通いはじめた。

もっとも、彼女場合は夕方に出かけて、
共謀者が用意した宿で夜を過ごすと、
翌朝町へもどるのであった。

したがって、夕方チンチャーがジェータヴァナへ
向かって歩いていくと、帰途につく人びとに出会い、
朝には逆になった。

当然、これは人びとの関心をひき、皆が彼女に何をしてい
るのかたずねはじめた。最初チンチャーは、「あなたたち
には関係ありません。」と答えるだけだった。


しかし、数週間たつと彼女の往来は有名になり、次のよう
に答えはじめた。「僧ガウタマ様とふたりきりで、素晴ら
しい香りの部屋で夜を過ごしました。」

時が経つにつれて、チンチャーは布を腰のまわりに巻いて
妊娠しているように見せかけた。そして、僧ガウタマが父
親だとおおっぴらに言いはじめたのである。

約九か月経過すると、ついに彼女は木片を外套の中に詰め
込み、ジェータヴァナのブッダが説法しているところへ
おもむいた。

まるで歩き疲れたかのようによろめきながら現れると、
ブッダの説法のさ中に、皆の前で皮肉な口調で話しかけた。

「偉大なお坊様。ずいぶんたくさんの方が、あなたが真理
を説くのを聞いておられるのですね。あなたの声はなんと
甘く、くちびるは何と柔らかなのでしょう。

でも、私を孕ませたのはあなたです。子どもは、いつ何どき
生まれてくるか分かりません。それなのに、あなたは何の手
助けもしてくれないじゃありませんか。」

ブッダは、説法を邪魔されたが、こう答えただけであった。
「尼僧よ。私たちふたりだけが、あなたの言うことが正しい
かどうか知っていますね。」

その瞬間、一陣の風が吹いて、チンチャーの外套の裾をめく
り、木片は尼僧の足にまともに落ちた。それは、かなり大き
な木片であったにちがいない。というのも、彼女はつま先を
切り落とされてしまったそうであるから。

憤慨した群集は立ち上がり、「ブッダの悪口を言うなんて、
鬼婆め。」と叫びながら、ただちに彼女を追い払ってしま
った。つま先を失くしたチンチャーはもちろん、共謀者たち
はくやしがったが、ブッダの名声はいっそう高まった。

しかし、この逆転にもひるまず、ブッダに敵対する宗教家た
ちはブッダの信用を傷つけようと、もっと巧妙なたくらみを
考えた。

今回の主人公も、チンチャーと同じようにたいへん美しい
スンダリーという女性であった。彼女も口説かれて、しばら
くまるでブッダの愛人のように振舞った。

しかし、彼女の場合、事件は不幸な転回をし、ほんの数日後
悪人どもに殺されて、ブッダの滞在していた僧院のごみ溜め
に捨てられてしまったのである。

スンダリーの失踪に、反対派の者たちは大騒ぎして、犯人を
探しはじめた。王の所へ訴え出ると、ついでに「スンダリーは、
近頃ジェータヴァナで夜を過ごしていました。」と告げた。

王の許しを得て捜索隊を組織し、彼女の死体をごみ溜めで見つ
けると、仰々しく町へ運び込んだ。そして王と市民に向かって、
ブッダと彼女の情事を隠すために、スンダリーはブッダの弟子
たちに殺されたのだと主張した。

その結果、事件は人びとの関心の的となったが、それを聞くと、
ブッダはこう言っただけであった。「実際に起こらなかったこ
とを起こったと言う人は誰でも、自己の悪業の悲しい結果を引
きうけなければならない。」

一方、王は事件を調査するために自分の部下を派遣した。まも
なく彼らは、人殺しの報酬で飲んでいる殺し屋たちに出くわす。
そのとき殺し屋たちはけんかをはじめ、たがいに人殺しの罪を
なすりつけ合っていた。

ただちに王の前に引き出された彼らは、すべてを白状する。
王は、問題の宗教家たちを召喚し、町じゅうに自分たちの罪を
告白して歩くよう命じた。その後はじめて、彼らは殺人に対す
るしかるべき罰を受けたのであった。



次回につづく


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テーマ:宗教・信仰
ジャンル:学問・文化・芸術
コメント
この記事へのコメント
八風吹不動天辺月
八風吹けども動ぜす天辺の月

世間の風には八つの風があるという。
(利・衰・毀・誉・称・譏・苦・楽の八風)


世間には、妬みの風、そしりの風、誘惑の風、苦しみの風、
ままならぬ風、ほまれの風や楽しみの風などが吹き荒れて
いる。

そんな様々な風が吹いてきても、天空の月は惑わされることも
なく悠々としている。

成功したら妬まれる。失敗したらしたで、バカにされる。
ほめられるとすぐにうぬぼれる。けなされるとしょげてしまう。

どんな風に翻弄されても、天空の月のようにゆうゆうとして
いたいですね。


2008/09/07(Sun) 20:36 | URL  | ろくろく #-[ 編集]
世間の風
いいかげんな風が吹きまくっているのですね。
簡単に信用できませんね。うわさなど簡単におもしろおかしく作られるのでしょうから・・・。

ブッダの答えに感心しました。
「尼僧よ。私たちふたりだけが あなたの言うことが正しいかどうか知ってますね」この女性の良心にストレートに響いたことでしょう。
もう一つ。
「実際に起こらなかったことを 起こったという人は誰でも 自分の悪業の悲しい結果を引き受けねばならない」この世は自分が原因の種を蒔き、結果の実りを自分で刈らねばならないのですね。宇宙の法則は狂いがないから、畏怖を覚えます!やまんばこれからでも気をつけようっと。
2008/09/07(Sun) 09:13 | URL  | やまんばさん #-[ 編集]
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