2008年08月31日 (日) | Edit |
H. サダーティッサ著 桂紹隆・桂宥子訳「ブッダの生涯」立風書房より(31)


結婚式の当日に出家した者として当然のことであろうが、
ナンダは苦行者の生活になかなかなじまなかった。

彼の心は、残してきた美しい花嫁のことでいっぱいであった。
そして、自分はみじめで、家が恋しいと仲間の僧たちにこぼした。

また、僧院生活にはふさわしくないほど外見に気を配り、
当時のおしゃれな男性がするように化粧をしたり、
きちんと折り目をつけた衣をまとったりした。

乞食にも、普通の鉢ではなく、
上品でつやのある陶器の鉢を持って出かけた。


ナンダがかわいそうだと仲間の僧たちに告げられて、
ブッダはみずから問題の解決にあたった。

「ナンダよ、君は信仰の故に家庭を捨て、出家生活に入った僧団
の一員である。きちんと折り目をつけた衣をまとい、化粧をし、
上薬のかかった陶器の鉢を持つのはふさわしくない。君は森に住み、
施された食物だけを食べ、ぼろきれの衣をまとい、欲望を離れた
生活をしなさい。」

ブッダは丁寧にナンダに教えを説いて、徐々に俗世への関心、特に
美しい妻へのあこがれから彼を引き離した。その結果、ナンダは
立派な弟子となったのである。

ブッダのカピラヴァストゥ訪問中に家族の中から出たもうひとりの
有名な帰依者に、息子のラーフラがいた。彼は、シッダールタが
悟りを求めて家を出たちょうどその頃生まれたのであった。

今や七歳になるラーフラは、母親のヤソーダラーと、祖父のスッドー
ダナ王に育てられていた。ヤソーダラは、父王と同じように夫の出家
を寂しく感じていたにちがいない。

ブッダがカピラヴァストゥにもどって来たとき、ラーフラを通して
ブッダに近づこうと考えた。彼女の表向きの関心は、ラーフラのため
に、父ブッダが放棄した遺産を確保することにあったとされている。

事実、それは最大の関心事であったにちがいない。しかし、この出来
事をより大きな視野で眺め、とりわけ彼女のその後の人生を考慮する
と、そこには、妻をはじめ、あらゆる俗世への執着を捨てた夫に対す
る絶望的なあこがれがあったと思われる。

ブッダが到着して七日目に、ヤソーダラーはラーフラに立派な着物を
着せて、ブッダが食事をしているところに連れて行ったといわれる。
彼女はブッダを指して、ラーフラに言った。

「王子よ、あれが誰だか知っていますか。」
「母上、あれはブッダです。」
ラーフラは子どもらしい素直さで返事をした。

このとき、ヤソーダラーの目は涙でいっぱいになった。彼女は続けて
いった。「王子よ、黄金色の肌をして弟子たちにとりかこまれている
あの聖者は、あなたの父親です。昔はたくさんの財産をお持ちでした。

あの御方のところへ行って言いなさい。『父上、私が王子です。即位
するとき、私は王中の王になりたく思います。私に財産を譲ってくだ
さい。父親のものは当然息子のものです。』と。」



次回につづく


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コメント
この記事へのコメント
ナンダ(難陀)
ブッダの異母兄弟、孫陀羅難陀ともいう。

ブッダが跡継ぎを拒否したため、スッドーダナ王は
しかたなくナンダに王位を継承させようとしました。

そのナンダの結婚式の当日に、ブッダは王や花嫁に
断りをすることもなくナンダを出家させてしまいます。

ナンダ自身も気乗りがしなかったのに無理矢理に出家
させてしまったのですから、むごいことです。

ブッダは自分が開いた仏教にほんとに自信があったの
ですね。


2008/08/31(Sun) 21:20 | URL  | ろくろく #-[ 編集]
絶望的あこがれ
相手の幸せを思うと、出家を認めるしかなかったでしょうが、さみしかったでしょうね・・・。
なんにでも光と影があるから、ヤソーダラさんも、ナンダさんの妻もまた、別の道の人生を歩まれ、それはそれで、幸せをみつけられたことでしょうね。
「絶望的なあこがれ」は、肉を切り刻むほどの苦しさを伴い、「執着を断つ」ことの修行になったことでしょうね。あとから思えば、それも幸せということなのでしょうね・・・。う~~~ん。何がよくて何が悪いのか、やまんばの小さなものさしでは計り切れないのですね~~~~本当の愛はそういう関係を断つことから出発するのでしょうね。苦しいことですね。なかなかなかなか


2008/08/31(Sun) 07:34 | URL  | やまんばさん #-[ 編集]
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