2008年08月18日 (月) | Edit |
宇野千代著「天風先生座談」二見書房より (58)


私の竹馬の友に、終戦前まで、日本一の金持ち
といわれました男爵、岩崎久弥というのがおり
ました。死にましたけれども、もう。

私の学習院時代のクラスメイトだった。
これが、とにかく、日本で一番の金持ちですから、
湯島の天神の、有名な『婦系図』の、あの筋向いの
角の家が、男爵の家でした。

はたから見たならば、仕合せな男だ、と誰でも思う
でしょう、これはね。手形の心配もいらなきゃ、
相場がどんなに上り下りしようが、ビクともしない。



磐石のような、巨万の資産の上にどっかりと胡坐を
かいてれァ日々がすごせるってェんですからね。

ところが、当のご本人、どういたしまして、
私に会うたびに、出るのは愚痴だけ。

「ねェ、おい、中村、俺は生まれそこなったい。こんな家に
生まれたばっかりによ。生まれてから今日まで、俺は一人で
もって自分の思うことをしたことはないよ。

どこに出るんだって、しょっちゅう五人、十人ぞろぞろくっ
ついて来るだろう。俺があれを買いたい、これを食いたいと
言っても、買うことも出来なきゃ食うことも出来ない。

いえ、ね、家ん中にいてね、ちょいとトイレに行くんだって、
すぐ二人くらいついてくる。お前が大名生活をいやがってから
に、家を飛び出した気持わかるよ。

不自由なもんだね、人がついているのは、そりゃね、俺んとこ
は金はあるかもしれないけれども、その金、なんになる。使わ
ない金があったって、絵に描いた餅と同じことじゃないか。」

そしたら、奥さんが、
「そうでございますよ。私でも、ダイヤの指輪だけでも五百持
ってますよ。」

「えッ、五百。東京中に指輪の一番たくさん置いてある服部あ
たりへ行ったって、そんな数はないでしょう。見せてくれよ、
一ぺん。」

大きな洋服箪笥みたいなものを、家令が二人でもって、蔵から
持って来た。抽斗が一ぱいついている。なかには英国の女王
エリザベスの持っている、あのダイヤの次のダイヤ、親指の頭
二つくらいの大きさのダイヤ。

そしてこの人、ダイヤのちりばめたものは指輪だけかと思ったら、
どういたしまして、首輪がある、膝小僧のところにはめる足の環
がある。

「これは買ったんですか。」
「買やあしませんよ。みんな、社員だの、あるいは外国からお客
に来る人が、お土産に持ってくるんですよ。」

金があるってェと、いろいろ金のある奴と連絡をつけたいために、
贈り物を持ってくるんでしょうね。




次回につづく


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ジャンル:心と身体
コメント
この記事へのコメント
やまんばさん
おまごさんのお世話、ごくろうさまでした。

「子供の観察力、表現力はすばらしい」
と思えるやまんばさんがすばらしいのだと
思います。


心のどこかで、金持ちであれば幸福になれるはず
と思っている自分がいましたが、お金があったら
あったで、また別の悩みがあるのですね。

チョッとがっかり、かなり安心しました。


2008/08/18(Mon) 18:12 | URL  | ろくろく #-[ 編集]
おはようございます^^
昨日、孫たちは帰っていきました。
また、静かな生活が戻ってきました。
三人の子供はエネルギーの塊。きゃーきゃーわーわー^^
やまんばは最初学びも忘れて、感情的になってしまっていたら、孫たちからすばらしいあだ名をもらいました。・・・ふぐ・・・・^^^
つつくとすぐにふくれるからだそうです(おもしろい~~~^^^^)
子供の観察力、表現力はすばらしいです!

さあ、今日からまた新たな気持ちで望みましょう。ろくろくさん、よろしくお願いいたします。

「日本一のお金持ちのお話」
お気の毒なくらい不自由ですね。
一人でいることができなかったり、売るほどダイヤが
あったりしたら、・・・なったことがないのでわかりませんが、不自由さだけでいうなら、囚人みたいに感じます。お金がないのも不自由ですが、ありすぎるのも困るのですね。みんなどこかが欠けた丸ですね。
 

2008/08/18(Mon) 06:44 | URL  | やまんばさん #-[ 編集]
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