2008年08月17日 (日) | Edit |
宇野千代著「天風先生座談」二見書房より (57)


さあ、そこで、すぐに考えていただきたいのは、
町全体が富んでいる芦屋市民諸君は、

日本のどの都市の市民より、比較においてですよ、
非常な幸福を感じておられますか。

ノーでしょう。
いいえ、でしょう。
顔を見ればすぐわかる、私には。

四十年間、毎日毎日、夜となく昼となく、
こういう高いところへ乗せられて、

もっとも、
自分から進んでやっている仕事ですから、
喜んで乗りますけれども、

昔は三尺高い木の上に乗るのは、
この世最後のときです。


それで、ずらっとお顔を拝見すると、すぐわかります。
あなた方のほうから見ると、私の顔が一つしか見えて
いません。けれども、私の方から見ると、ずらり、
みなさんの顔がはっきり見える。

まァ、今日はそういう人はいませんけれども、この間、
東京の講演のときには、一番うしろの隅に坐っている人が、
一所懸命なにか食べている。帰りがけに「さっき召し上が
っていたのは、何です。」と言ったら、

「いえ、お弁当食べずに来たものですから、時間に遅れちゃ
大変だと思って、ここへ来て、お話きいているうちにお腹が
減ってきた来たもんですから、食べたり聞いたりしてました。」

女の人でしたが、このせつの女の人は勇敢だ。お握りを食べて
いた。東京では、このごろ、お握りを一個三十円で、三つ包んで
からに、九十円でどこででも売っていますものね。

そのような状態も、はっきり見えるんであります。ですから、
ああ、あの人はほんとうに幸福な人生を生きておられるわ、
という人は、一目でぱっとわかります。

これがやがて、ご縁があって、私と師弟の間柄になりますと、
その肉眼でその人の顔を見て、その顔から、いや、頭の中の眼
からと言いましょう。眼からその人の心の状態が、ある光と
なって出ているのであります。

ルミエ、オブ、スキュルと申しまして、見えない光、この見えない
光が見えるような、生命に特殊な仕掛けがありますからね。すると、
あ、この人はいま、心配しているな、悩みがあるな、いや、いや、
安心しているな、朗らかだな、ということがわかるのであります。

こんな始めての方がおられるのに、遠慮のないことを申し上げて
相済みませんけれども、さっき、ここに出るまでは、今日の演題は、
芦屋の市民諸君にしっくりするかしら。

演壇に立って、ぱっと皆さんの顔を見たら、みんな幸福だってェ
ことになると、こりゃァ、演題を変えなきゃならんぞ、という気持
がかすかながら私の心の中にあったんですが、ここへ来て、ぱっと
見て、ああよかった。これはやっぱりおあつらえむきの顔だ。

おあつらえむきの顔と言っちゃァ相済みませんけれども、誰々さん
と指はさしませんけれども、なんとはなしに満たされないような、
報いられないような、嬉しくないような人生に生きている方のほう
が多いようであります。

多いようであります、というのは、これはお世辞なのよ。
多いのであります。中には、人も羨むようなぜいたくの出来る身分
の人も着ておられる。

ね、ご自分はお金持ちにならなくても、ご主人の名誉や地位の高い
人もおられるでしょう。そんな人たち、どうです。決して、真の幸
福なんて、だいそれた、そんなこと一ぺんだって味わったことはな
いでしょう、お互いに。

金持ちが幸福ならば、これは、人生てェものは、金さえ出来れば
みんな仕合せになれるんですから、それ以上、何も研究する必要は
ありません。



次回につづく


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コメント
この記事へのコメント
マインド・ラボ
脳は色や形におもしろい反応をしているのですね。色彩の部分をやってみました。あとはお気に入りにいれて、閑をみつけたらやってみます。ありがとうございました。
2008/08/18(Mon) 10:01 | URL  | やまんばさん #-[ 編集]
マインド・ラボ
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2008/08/17(Sun) 18:17 | URL  | ろくろく #-[ 編集]
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