2008年08月08日 (金) | Edit |
H. サダーティッサ著 桂紹隆・桂宥子訳「ブッダの生涯」立風書房より(28) 


ブッダのこの話を聞いていた人びとの多くが、
それほど簡単に納得したとは思われない。

というは、二千五百年たった現在でも、人種隔離政策
(アパルトヘイト)などの現代のカースト主義を弁護する
人びとに向かって、同じような議論が行なわれている
からである。

しかし、サーヴァッティーの善良な市民たちは、
この問題についてそれ以上大騒ぎをしなかったようである。

もうひとつの話は、スニータという不可触民にまつわる
ものである。



彼の仕事は道路の清掃であり、これによって辛うじて生計を
たてていた。適当なねぐらもなく、スニータは自分が働く道端
で寝泊りしていた。

そして、たまたま通りかかる身分の高いカーストの人たちを
汚さないように、つねに注意していなければならなかった。

そうしなければ、厳しいむち打ち刑を受けることになっていた
からである。だからいつでも、高いカーストの人が近づいてくる
ときは、道から離れて安全な距離をおいて立っていた。

ある日、忙しく道路を掃いていると、ブッダがお伴の僧を大勢
従えてやって来るのに会った。

スニータは、これらの人びとがカースト出身の聖者である(実際は
ほとんどの者はそうであったが)と考えたので、隠れようとしたが、
間に合わず次善の策をこうじた。つまり、壁に身体をぴたりとつけ
て合掌したのである。

ところが、スニータがあわてふためいたことに、ブッタはまっすぐ
彼の所にやって来た。予期に反して、ブッタは厳しく叱りつけずに
親しく話しかけてきた。

ブッダはスニータに、この仕事をやめて仏教徒にならないかと単刀
直入にたずねた。スニータは驚き、喜んで答えた。

「尊者よ、これまで私にやさしく話しかけてくれた人は誰もいません。
いつもただ、ああしろ、こうしろと命じられるだけでした。もし私の
ようにきたなく、みすぼらしい掃除夫でも僧団に受入れてくださるなら、
もちろん、このけがわらしい仕事を捨てて、あなたのお伴をいたします。」

ブッダは、ただちに彼を正式な僧にした。そして、最初は無知で無教育
であったスニータが、後には僧団の名士となり、多くの人びとの尊敬を
集めたということである。

近年インドで、不可触民出身の高名な指導者アンベドカル博士の指導の
もとに、多くの不可触民が、ヒンズー教を捨てて仏教徒になったのは
興味深いことである。

彼らは新仏教徒(ネオブディスト)と呼ばれ、その数も数百万にのぼり、
特に博士の故国マハーラーシュトラ州に多い。



次回につづく


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ジャンル:学問・文化・芸術
コメント
この記事へのコメント
インド新仏教徒(ネオブディスト)
仏教が低いカーストの人たちにも広がっていき、瞬く間に
大きな組織となっていったのがうかがえます。しかしながら
やがて仏教は廃れていきインドでは消滅してしまいます。

消滅した原因は色々とあるのでしょうが、インド人の心の底に
渦巻いている根深い差別意識に、仏教が消滅した原因の一端が
あったのではないでしょうか。

しかしながらここにきて不可触民(アウト・カースト)であり、
同階層出身のカリスマ的政治家アンベドカル博士(1891-1956 
独立インドの初代法務大臣としてインド憲法を起草)が登場し
ます。

カースト制の底辺にあって差別と迫害を受けつづけた不可触民
たちが博士の呼びかけで次々と仏教に改宗していきました。
これがインド新仏教徒(ネオブディスト)運動です。


人口10億を数えるインドにあって、80年代初頭まで仏教徒は
1%に満たなかった。しかし現在では少なくとも5千万人、
一説には1億5千万人もの仏教徒がインドにいるとされます。

事実ならば、インドの仏教徒は人口の10%を超え、
イスラームにも匹敵する大勢力です。
(現在、政治的配慮からインドの宗教人口統計は不明)

そしてこの歴史的大事件の渦中に、佐々井秀嶺という日本出身の
僧侶(現在インド国籍)がいたというのです。興味深いですね。



佐々井秀嶺 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%90%E3%80%85%E4%BA%95%E7%A7%80%E5%B6%BA


2008/08/08(Fri) 18:38 | URL  | ろくろく #-[ 編集]
ブッダは単刀直入にたずねた
ここが大変魅力的でした。

アーナンダさんは謙虚でやさしく、おまけに美男子だったから、人気者だったのですね。しかしストーカーなどは困りますね^^。

ほれ薬・・・村の長老の秘伝のホレ薬を口にした感想
       「おっさんくさい!」の表現。
      吹き出しました。

ホント!ここはいろんなことを知ることができて、勉強になります。ありがとうございます。
2008/08/08(Fri) 08:35 | URL  | やまんばさん #-[ 編集]
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