2008年07月20日 (日) | Edit |
宇野千代著「天風先生座談」二見書房より (49)


ある事柄に対して、そこに観念が加わると、
観念のダブルページというものが発生する。

これもおわかりにならないだろう。
分かりやすく言えばね、悲しいな、と思って泣くでしょう。
よけい悲しくなる。これがダブルページだ。

腹が立った。こん畜生、と思って、やい、なんて言うと、
よけい腹が立つ。反対に、こんどは僅かな喜びを、
非常に大げさに喜ぶと、僅かな喜びは非常な嬉しさになる。


片っぽうの方は、あなた方、しょっちゅう経験しているから、
わかっているでしょう。それでも、まだわからなかったら、
うちへ帰って、鏡を見て笑って見ろ。

おかしくも何ともなくてもいいから、誰もいないところで、
人がいたら気違いだと思われるから。鏡に顔を映して、
ヘヘヘヘ、ウフフフフ、と笑って見ろ。

どんなお多福でも、笑い顔は憎いものじゃありません。
笑い顔まで憎かったら、死んじまえ。

うちへ帰ってやってごらん。ウフフフフ、エヘヘヘヘと、
人知れずやってごらん。何となくおかしくなるから。
おかしいな、という気分を出しただけでも、人間、心の中には
愉快な爽やかさが出て来る。

あなた方は、愉しいことがあっても、愉しいと思わないんだから。
実は、今日、この席に来ておられるから、そっちの方へむかないで、
こっちの方へむいて話しますけれども、終戦後、間もなくですよ。

まだ、ここの会員にならないときに、材木でうんと儲けた。
それはもう、友だちが見ても羨ましいほど、儲けちまいやがった。

そんなに儲けていながら、夜、眠れないの、さァ手が震えるのとい
うんで、医者にかかったら、ノイローゼだと言われた。それで、
いまもいっしょに来ていますがね、その男を紹介した人が。その人
は古い会員だ。

「先生、私の友だちにへんな奴がいるんですよ。銭儲けしやがって、
神経衰弱にかかっている。」

「面白いね、それは、」

「面白かないですよ。人に会うと、泣き事ばかり言いやがって、」

「連れて来いよ。一ぺん診てやるから。」

私が診るのは、医者のように診察するのではありません。
話を聞きながら、精神分析をする。話を聞きながら、精神分析を
していったら、こいつ、こうなんです。

大正十五年に一ぺん、おそろしく儲けた。ところが、昭和五年に
ガラを食いやがって、ペシャンコになってしまいやがった。



次回につづく


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