2008年07月15日 (火) | Edit |
宇野千代著「天風先生座談」二見書房より (44)


ご参考までに、私がインドで先生に言われたことを
お聞かせしましょう。

毎日毎日、体の調子が悪いものだから、
ついつい、眉に八の字をよせて、
笑顔ひとつ出来なかった私にむかって、

「今日はどうだね、」
ときかれる。

「ええ、今日は頭も痛くありませんし、熱もないんですが、
ただ、気が重うござんしてね、」


「気が重いというのは、どういうんだい。」

「それはちょっと説明できませんけれども、
ともかく重いんですよ。」

手に持ったこともない気が、重いように思うんだね。
どこもどうもなくても、笑顔してもいいんだけれども、
その笑顔が出来ない。当時の私はそうでした。

すると、こう言われた。
「お前はね、誰に頼まれていったい、自分の毎日を、
そんなにうす暗く生きているんだい。」

「誰にも頼まれやしません。体の具合が悪いからですよ。
私だってね、先生。体が丈夫なときには、それはもう、
わたしくらい快活な人間もいないといわれたくらいの人間でしたよ。

病になったから、こんなになっちまったんですよ。いつ殺されるか
わからないような、今日あって明日なき命を覚悟の上で、軍事探偵を
しているときでも、私くらい快活な奴はないと言われた人間ですよ。
病さえ直れば、もとの快活になれらァ。」

「病が直ったらてェと、それじゃァ、直らなかったらお前は、
生涯、快活にはなれないのかい。」

「なれませんよ。」

「そうかい。それじゃァ、お前は直らないよ。」

「えッ。」

「快活になれないんなら、直らないよ、第一、お前はね、
ようく考えて見ろ。ほんとうに有難いと言うことを感じない、
というのが、その理由だ。」

「有難いことが、何かあるんですか。」

「俺から見るてェと、お前は世界一の幸福者だ。」

「世界一の幸福者。この私が。へッ。こんなにのべつ、八年も
熱わずらって、いつなんどき死んじまうかわからないような、
危い病を背負っていながら、世界一の幸福者だとはね、」

「その病があるからこそ、同じインドに生まれても、
どんな身分の人でも、ヨガの研究をする家に生まれたもの
でなければ、俺のわきには来られないんだぜ。

それを偶然、旅の道連れにカイロでお前に会って、
私はお前をいかにも哀れだと思って、
ここへ連れて来てやった。

お前が学問のない人間なら、俺は連れてこなかった。



次回につづく


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テーマ:モノの見方、考え方。
ジャンル:心と身体
コメント
この記事へのコメント
お前は世界一の幸福者だ
「お前は世界一の幸福者だ。」と言われて、
「ありがとうございます。私もほんとにそう思います」と、
すぐに言えないのは、思考がそうさせているからですね。

思考に潜む比較や嫉妬の心を観察することで、乗り越えられる
ことだと思います。「私は世界一の幸福者!」なんですから・・・



パールズの心理的成長の障害になる4つのメカニズムのなかで、
やまんばさんは「特に①の取り込みが多いなあと観ました。」
とコメントにありましたが、

②の「投影」(取り込みの反対で自分に端を発しているものを
他者のせいにしてしまう傾向をさす)も、決して少なくないと
思います。

「取り込み」は「投影」の裏表ですから、どちらだけということ
は考えにくいからです。
また、「投影」は、なかなか本人は気づかないのです。

他人から不愉快な感情をぶつけられていると感じるとき、
自分の方が先にぶつけていることがけっこうあるものです。
これが「投影」です。しっかり、自己観察しましょう。


2008/07/15(Tue) 17:42 | URL  | ろくろく #-[ 編集]
あなたほど幸せな人はいない
やまんばも若い頃、そういわれたことがあります。
びっくりしました。
自分にばかり囚われていて全体をみれなくなり、感謝することを忘れていたことに気が付きました。

一瞬で、意識改革をしてくれたその方に感謝しています。振り返れば、そんな数個の宝石のような言葉が、自分の人生の方向を決定してきたように思います。

ろくろくさん、昨日はまちがいを指摘してくださりありがとうございます^^。やまんば、正確に見ながらキーをうったつもりでしたのに、見ていなかったのですねえ。「正確に見る」途中から、見る行為が頭の中にある知っている言葉にすりかえられて、思い込みしてキーを打ってる・・。これにかぎらず、全てのことに対してこのようなことをやっているのだと思いました。「ありのままに見る。」・・・気をつけます^^。
2008/07/15(Tue) 07:50 | URL  | やまんばさん #-[ 編集]
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