2008年06月06日 (金) | Edit |
H. サダーティッサ著 桂紹隆・桂宥子訳「ブッダの生涯」立風書房より(5)


言い争いは続き、ついにシッダールタはこの事件を
賢者たちの法廷にもち込むことを提案した。

証言がすべて聞かれた後、次のような判決が下された。

「生命は、それを救おうとする者に帰属する。
ただ生命を奪おうとする者は、それを要求することはできない。
したがって、傷ついた白鳥を得る権利は、シッダールタにある。」

一方スッドーダナ王は、王子が誕生した折のバラモンたちの予言
をずっと心にかけていた。


シッダールタの成長につれて、四つの特別な徴証(サイン)を見た
後王子は出家するというコンダンニャの予言が、とりわけ王の心
を悩ませた。

そこである日、王はふたたびバラモンたちを呼び集めた。今度は、
七人しか集まらなかった。というのは、シッダールタがブッダに
なる日を待つために、コンダンニャは姿を消していたからである。

王はバラモンたちに、四つの徴証とは何か説明するよう求めた。
七人のバラモンたちはコンダンニャと違い、シッダールタに二つ
の可能性を認めていた。

「王子はブッダになられるか、偉大な皇帝になられるかのいずれ
かでしょう。しかし異なった状態にある四人、つまり老人、病人、
死人、そして苦からの解放を求めて出家した苦行者に次々と出会
うなら、ブッダになる道を選ばれるでしょう。」

王は、それなら王子がそのような徴証を見ないようにしなければ
ならないと考えた。そこでただちに、老人、病人、そして死を
暗示するようなものはいっさい、王子の近くに寄せつけないよう
命じた。

そのために、監視人が特別に配置された。また苦行者は、王子の
周辺一マイル以内に近づくことを許されなかった。

王子には若い従者のみがつけられ、病、老、死あるいは修業生活
にふれることは厳しく禁じられた。老衰や死を暗示するものを
王子が目にしないように、庭や公園からはしおれた草花も取り除
かれたほどである。

同時に、尽くせる限りの贅沢と快楽がシッダールタに与えられた。
夏と雨季と涼しい冬という熱帯地方の三つの季節に応じて、彼の
ためにそれぞれ三つの宮殿が建てられた。魚と水練と白鳥で
いっぱいの池がある大きな庭や、猟場も作られた。

このような環境で、シッダールタは力強く、美しく、すぐれた知性
を備えた若者に成長していった。武芸は同年代の若者をしのぎ、
博識と頭の鋭さは有名な学者さえもおよばなかった。

やがてスッドーダナ王は、シッダールタも結婚する年頃になったと
考えた。そこである日、国じゅうの適齢期の娘を王宮に集め、
シッダールタに花嫁を選ばせた。

娘たちの中に、美しくて魅力的な従妹、ヤソーダラーがいた。
王の喜んだことに、シッダールタは彼女を選んだ。

ふたりは、かずかずの儀式と祝典のうちに結婚した。シッダールタ
が二十九歳の誕生日を迎えようとする頃には、ヤソーダラーは出産
をひかえていた。スッドーダナ王は、結局すべてが自分の望みどお
りになったと思いはじめた。

シッダールタは、人生の真相を明かす証拠に接することを禁じられ、
あらゆる楽しみと慰めを与えられていたが、そういうものには心を
奪われず、いつも物思いに沈んでいた。

フェアリー・テールの常として、王の手のこんだ予防策は、
「人生は苦である」という現実の発見のまえに、もろくも崩れ去っ
てしまうのであった。

そしてこの発見こそ、
後にブッダの教えの基礎となるのである。



次回につづく


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テーマ:仏教・佛教
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