2008年05月14日 (水) | Edit |
宇野千代著「天風先生座談」二見書房より (22)


埴土まるめて、息三度吹きけるに、ありあまるところのある
ものが生まれた、と言うんだから、男だよ。男はありあまる
ところがあるだろう、一つ。

それから、また、何と思ったか神様、これは私が言ったん
じゃないよ。古いローマ教にある。神様が、この埴土まるめ
て出来た、ありあまるところのあるものの、

その肋っ骨の三本目をとって、また、息三度吹きけるに、
ありあまるところあらざるもの生れき、と言うだから女だな。
ありあまらざるところがあるだろう、何か。


ほんとうに、まだ、キリスト誕生の八百年までは、
それをほんとうだと思ったんですから、

人間進化の過程で、その過去においては、
実に吹き出したいくらいのおかしなことを、
本気で考えていた時代があった。

ですから、神だ仏だといって、
何か人間みたいな恰好をしたものがあったと思ったのは、
無理はありませんよ。

だから、いまの人間の考えている常識も、いまの時代には
間違っていないように考えているかも知れないが、これが
もう、十万年も二十万年経ったら、その時代の人から見ると、

いまの人間の頭の中の状態なんていうものは、野蛮も野蛮、
大野蛮だろうと思うんだ。野蛮といわれてもしようがないよ。
ハイヒールはいて、頭をカールして、男もレディメードで
あろうと洋服を着て、紳士であるといばっていながら、

テレビジョンがどうしていったい出来ているのやら、
ミサイルがどうして飛ぶのやら、人工衛星がどうして空を飛ぶ
のやら、ちっとも知らねェで、

輦轂(れんこく)の下の帝都の市民だといって、肩で風を切って
歩いてやァがるんだ。そんなこと言いたかァないけれど、
ここにもいやしないかと思うんだ。

このあいだ、大阪でね。トランジスターというものの根本要素
になっているものを、知ってるものは手を上げて、と言ったら、
二人しかいなかった。聞いたら、トランジスター屋よ。

これは皮肉な意地悪で言ってるんじゃないんですが、あなた方。
たいていの人は、こういう方面のことは考えないで、その日
その日のことを、ただ、夜が明けたから眼が覚めて、腹がへった
からものを食って、糞しょんべんを垂れるだけ。

夜になったら眠いから寝ちゃって、また朝起きて、食って垂れて、
寝て起きて、毎日食って垂れている。

そして、毎日、ああもしたい、こうもしたいと欲望を炎と燃やし
て、どうにもならない。寝ちゃァ起きちゃァ、食ちゃァ垂れちゃァ、
何年か経ったらフウーッと消えちまうという人生を、生きてる人
が多かった。

確かにあなた方もそのお仲間だったのが、こんにち今夜からその
お仲間から離反して、新しい真理の国にはいられる。まったく
ご幸福ですよ。

町へ出てごらん。いま聞いただけのこと知ってる奴は一人もいや
しない。偉そうな理屈言ってる奴をとっつかまえてきいてごらん。
「人間、どうして生きているんでしょう。」

ぎゅっと参っちまうから。




次回につづく


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