2008年04月02日 (水) | Edit |
ティク・ナット・ハン著「微笑を生きる」春秋社より (60)


長いあいだ瞑想したあと、
私はこのような詩を書きました。

この詩のなかには三人の人物が登場します。
十二歳の少女と、海賊と、私です。

私たち三人がおたがいを見たときに、
他人と自分を区別できるでしょうか。

この詩に「私を本当の名前で呼んでください」
という題をつけました。私にはたくさんの名前が
あるからです。

私は自分の持っているたくさんの名前のひとつで
呼ばれたら、「はい」と答えざるをえません。


私が明日発つと言わないで
なぜって いま もうすでにここに着いているから

深く見つめてごらんなさい 私はいつもここにいる
春の小枝の芽になって
新しい巣で囀(さえず)りはじめた
まだ翼の生え揃わない小鳥
花のなかをうごめく青虫
そして石のなかに隠れた宝石となって

私はいまでもここにいる
笑ったり泣いたり
恐れたり喜んだりするために
私の心臓の鼓動は
生きてあるすべてのものの
生と死を刻んでいる

私は川面で変身するかげろう
そして春になると
かげろうを食べにくる小鳥

私は透きとおった池で嬉しそうに泳ぐ蛙
そしてしずかに忍び寄り 蛙をひと飲みにする草蛇

私はウガンダの骨と皮になった子ども
私の脚は細い竹のよう
そして私は武器商人 ウガンダに死の武器を売りに行く

私は十二歳の少女
小さな船の難民で
海賊に襲われて
海に身を投げた少女
そして私は海賊で
まだよく見ることも知らぬ者

私はこの両腕に大いなる力を持つ権力者
そして私は彼の「血の負債」を払うべく
強制収用所でしずかに死んでゆく者

私の喜びは春のよう
とても温かくて
生きとし生けるもののいのちを花ひらかせる

私の苦しみは涙の川のよう
溢れるように湧いては流れ
四つの海を満たしている

私を本当の名前で呼んでください
すべての叫びとすべての笑声が
同時にこの耳にとどくように
喜びと悲しみが
ひとつのすがたでこの瞳に映るように

私を本当の名前で呼んでください
私が目ざめ
こころの扉のその奥の
慈悲の扉がひらかれるように





ティク・ナット・ハン著「微笑を生きる」は
今回で終了いたします。



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テーマ:自己探求
ジャンル:心と身体
コメント
この記事へのコメント
相互依存的存在
「私を本当の名前で呼んでください」

この詩は何度読んでも、衝撃を受けます。
そしてやまんばさんと同様に感極まって涙が
あふれ出てきます。


私はかげろう、そしてかげろうを食べる小鳥
私は蛙、そして蛙をひと飲みにする草へび

私はウガンダの骨と皮になった子ども
そして私はウガンダに死の武器を売りに行く武器商人 

私は海賊に強姦され、海に飛び込んで自殺した少女
そして私は海賊で、まだよく見ることも知らぬ者



エンゲージド・ブディズムという言葉がある。
「関与する仏教」とか「参加しあう仏教」といった意味。
この言葉を世界にもたらしたのがティク・ナット・ハンさん
だった。

ベトナム禅の老師、世紀末と新世紀をまたぐ老師。
鈴木大拙、ダライ・ラマと並び称される老師。

「こういう人物が“アジアの現在”にいることに、久々に誇りをもった」
と松岡正剛さんは語っているが、彼はナット・ハン老師の禅は
「インタービーイングの禅」であるという。

「インタービーイング」は、教団の名称にもなっている。
いまふうに「相互依存的存在」と訳せるが、古典的な仏教用語でいえば
「縁起」ということである。

http://www1.kcn.ne.jp/~inter-be/thich.html



2008/04/02(Wed) 19:17 | URL  | ろくろく #-[ 編集]
泣いてしまいました
読んでいくうちに涙が溢れてまいりました。
こんな清らかな美しい心根の方がこの世にはおられるのですね。
思いを実行に移されているから、言葉がこちらにストレートに伝わってくるのですね。
美しい理想を口にするのは簡単ですが、実行に移すことは、岩のように不動な決意が必要だと思います。しかし、この方はあたかもそれが春の風のように、自然に、やわらかく、心を溶かすがごとくに言われています。
2008年の4月2日の朝、私はこの言葉に触れました。
このような純な魂の持ち主が書かれた言葉に触れました。忘れてはいけません。やまんばも少しでもこのように感じられるように生きようと思いました。
そうしないと、死が訪れたとき、両手を広げて飛び立つことができないでしょう。
2008/04/02(Wed) 07:03 | URL  | やまんばさん #-[ 編集]
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