2006年11月26日 (日) | Edit |
土居 健郎 著「表と裏」弘文堂より(34)


(眼に見えない絶望が
人々の意識を支配するようになったのは)

現代人がいつの頃からか、
先を見届けようとして、

実際また先が見えると錯覚したことが
原因していると考えたい。

要するに将来に希望を託す代わりに、
将来を予測しコントロールしようと
したのである。

このことと関連して思い出すのは、
ゲーテの『ファウスト』の冒頭で、

ファウストが悲痛な心境を吐露する
長い独白のことである。


彼は「いったいこの世界を奥の奥で
統べているのは何か、それが知りたい」(鴎外訳)
とありとあらゆる学問を究めても、

一向に神々の世界に飛翔するわけではなく、
却って人間らしい歓喜を失ったことを嘆いているが、

しかしこのように奥の奥、
裏の裏を知ろうとすれば、
絶望すのも無理ないのではなかろうか。

この点ファウストは現代を先取りしている。

そしてもし私たちが今一度、人類全体としても、
あるいは個人としても、
絶望から脱出したいと思うならば、

ファウストのようにメフィストフェレスに魂を売る
のではなく、ただ単純に、先を見届けようとすることを
止めることから始めねばならないだろう。

すなわちまず、
存在の根拠に秘密があることを
認めてかかることである。

裏はわからぬ、先は見えぬということで、
ストーリーははじめて発展するのである。


私は先に書いた二つの本のいずれも
その最後のところで、
将来が予測不能である点にふれた。

すなわち『漱石の心的世界』においては、
漱石の最後の作品『明暗』が、たまたま
作者の突然の死によって未完に終わった
という事実それ自体が、

この作品の主題である現代人の幻想が
死によってしか破られないことを暗示
していると指摘した。

次に『「甘え」の構造』の末尾においては、
現代人がおしなべて甘えている退行現象に
ふれて、

これが死に至る病か新たな健康への
前奏曲なのかは誰にもわからぬとのべた。

そこで本書も、先は見えぬが、
しかし先があると希望することを以って
筆を擱くとしよう。

われわれのストーリーはこれから先
まだ続くと信じたい。
われわれ個人の死を越えて。

またこの地球が核戦争ならぬ宇宙の異変
によってたとい滅びる日が来るとしても、
なおそれをも超えて。



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コメント
この記事へのコメント
私、悩んで眠れないって経験てしたことないですわ
2006/11/26(Sun) 23:08 | URL  | マリア #-[ 編集]
やまんばは楽天的な性格みたいです。
ろくろくさん、訂正、大変お世話になりました。以後気をつけます。昨日から、絶望のことを、思い巡らせていたけど、やまんばはどんなに悲しい、つらいことが、あっても、絶望はしたことないなあ・・、と、自分の人生を振り返っています。幼い頃から、亡くなった母がいつも口癖のように「一生懸命生きていたら、どんなに苦しくても、かならず、おてんとうさまが助けてくれはるさかいにな。くよくよ、考えたら、あかんで」と、言い聞かせてくれていたし、本当にそうでしたから、いつもなんとかなると思い、なんとなく安心して生きています。まあ、苦しくて思うようにならないときは、早く寝る、くよくよしてもなんの値打ちもないものね。ケセラセラ~、なるようになる~明日のこと~など~わから~ない~・・。あはは、やまんばは歌が大好きです。
2006/11/26(Sun) 19:53 | URL  | やまんばさん #-[ 編集]
マリアさん やまんばさん
昨日はコメントができなくてごめんなさい。

うっかりコメントをするとエラソーに
今日の記事のことまでも書きそうになって
しまったからでした。

今日の記事はとても大切だと思ったので
よけいな解説は抜きにして読んでいただきたく
考えたのです。


一昨日だったかやまんばさんが
マリアさんの復帰に喜んだためか
コメントにミス打ちがあって修正してほしいという
ご依頼があったのですが、

実際に修正するのには結構手間がかかりました。

名前の欄にやまんばさんと入れ
SUBJECTをコピぺし
コメント記事をコピーしてから
テキストにペーストし修正したあと
COMENT欄にコピぺする。

その後送信で終了と思いきや
一度更新してチェックしてOKだったのに
二度目に見てみると
すべてが消えてしまっていました。

テキストファイルに修正したのを削除せずにたまたま
のこしていたからよっかったけど
危うくやまんばさんのコメントがこの世から
完全に消えてしまうところでした。

ですので以降修正するのはみなさん
それぞれにやっていただきたいとおもいます。

どうするかといいますと
1、ご自分の記事をCommentのところからコピペして
2、一番下の新しいComment欄にコピペする。
3、Comment記事を修正して送信する
4、べつの新しいComment欄に「この記事と
2つある古い方の記事をを削除してください。
というコメントを送信する。

削除はこちらからワンクリックでできますので
気づき次第削除させていただきます。

以上です。

マリアさん やまんばさん みなさん
よろしくおねがいします。 m(_^_)m







2006/11/26(Sun) 14:41 | URL  | ろくろく #-[ 編集]
ごめんなさい
(それこそろくろくこれですねプログの功績!・・・)

のところ、「ろくろくプログの功績!」ですので(汗)。。いうだけ野暮ですが。。。

ろくろくさん、この編集ってどうやるの?
私、今、編集ボタン押して、削除押してみたんですけど、消えませんでしたわ
2006/11/26(Sun) 11:20 | URL  | マリア #-[ 編集]
おはようございます☆

>裏はわからぬ、先は見えぬということで、ストーリーははじめて発展する


先が見えないと不安に思うし、先が見える(つもり)と、つまらなくなるしで、人間て、否、私って本当、傲慢だなぁと痛感しますわ。。

謎は謎のまま、無理に解き明かすことをせず、というより、どう、逆立ちししようと人間には解き明かせる範疇ではないですものね。『神のみぞ知る』であって。。

土居さんの「裏の裏を知ろうとすれば、絶望するのも無理ない・・・」というのは、全く同感で、私もある時期、四柱推命にはまって、ありとあらゆる人を占い捲くった結果、軽い人間不信に陥ったことがありますし、ニーチェの言葉にも「深遠を覗きこむと向こうもこちらを覗いている・・・」(うろ覚えですが)って、ありましたよね?その通りでミイラとりがミイラになりかねませんし。

『表と裏』のこのシリーズ、私的にはいつにもまして、とても為になったし又とても面白かったですわ☆

何より(それこそろくろくこれですねプログの功績!と思いますが)私が、普通なら手にしないない分野や著者の本をを読むことができること!これです!

それが縁で、取り上げられた内容だけに飽き足らず「もっと読みたい」「買いたい」と思うことしばしばで、実際購入した人って多いでしょうね。かく言う私もそのひとりですが♪

ろくろくさん、どうぞ、これからもいい御本、御紹介してくださいましね☆


2006/11/26(Sun) 11:02 | URL  | マリア #-[ 編集]
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