2006年09月17日 (日) | Edit |
嵐山光三郎著「徒然草の知恵」ダイヤモンド社より(13)


「一時の怠りは一生の怠り」という兼好の人生観は
一〇八段にある。

ーー刹那覚えずといへども、これを運びて止まざれば、
命を終ふる期、忽(たちま)ちに至る 

ー一瞬の短い時間ははっきり意識できないが、
その一瞬を次々に経過させて止めなければ、
命を終える時間がたちまちにやって来る  〈一〇八段〉

この一〇八段の中には、もう一つの表現がある。


ーー一銭軽しといへども、これを重ねれば、
貧しき人を富める人となす

ー一銭の金はわずかなものではあるが、
これを積み重ねると、
貧乏な人を富んでいる人とする

こういう説明が、先に引用した「刹那覚えず・・・・・・」
という表現と併用されているところが、
兼好のしたたかな二枚腰であって、

刹那という極めて哲学的時間概念と、
一銭という極めて世俗的単位を対比させつつ
両手で教訓団子にこねてみせる。これが兼好の芸だ。


一瞬を大事にしなければならないと語るその譬えとして、
兼好が否定している銭そのものを持ち出すあたりが、
兼好が一筋ではいかぬ男であった証拠で、
現実を見据えている腰のすわり方が図太いのである。

兼好は別の段で、お金を貯めるのは空しいことであり、
財産を残すのは意味がないということを言っている。

その一方ではこの段のように、
一銭のお金の大切さを説いている。

兼好は隠者であり、山中にこもって哲学的幻想を
追いつつも、毎日金の計算をしていた。金の執着が
あるから金への幻想をも見定めることができる。

たからこそ『徒然草』全段が、冷厳なまでに
現実を見つめ、青くさい観念世界に入りこむことなく、
超時代に通用する普遍の処世術となり得たのである。

読者諸氏は、兼好の無常観や、
一時の怠りをいましめる言葉を、
けっして机上の念仏などと思うことなく、

つねに現在の自分やその環境に照らし合わせて
考えてみるようにしていただきたい。


次回につづく


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テーマ:哲学/倫理学
ジャンル:学問・文化・芸術
コメント
この記事へのコメント
今朝のコーヒーは身に沁みる
最初にみなさまにお詫びします。もうブログになるたけでてこないといいながら、毎回顔をちびちび出すやまんばの厚かましさをお許しください。今回のろくろく様の紹介の記事、やまんばもう一度じっくり読ませていただきました。谷沢永一さんの「人間通」に800アクセスあったのですか・・。やまんば、コメントにりっぱなやまんばになれるよう宣言をしてるのですね。トホホ。その前日には、「人間の本性は自己愛。自己愛と自己愛を結びつけるものが、羨望である」というところにやまんば感動して、またまたコメントしている。トホホのホ。こうなったら、やまんば意地でもこのコメントやめません。こうして赤恥をさらしていけば、少なくとも3月18日よりは言葉が理解を深めたのは確かですから。・・・わかるってこれの繰り返しなんだよなあ・・{業を否定しつつ業から離れられない。その苦痛と矛盾との格闘の書が「徒然草」である。}やまんば、そこに光を見出しました。感謝。てなこと言って、本当にわかってんのかなあ。情けなや、なさけなや・・・
2006/09/18(Mon) 07:29 | URL  | やまんばさん #-[ 編集]
けっして机上の念仏などではない
そうなんです。
こうして一字一字書き移してならぬ
タイプ打ちしていますと、

通りいっぺん読むだけとは違って
よく理解されるようです。

またこの嵐山光三郎さんがなかなかの曲者ですから
よりいっそう深く読ませていただくことが出来て
感謝です。


2006/09/17(Sun) 16:48 | URL  | ろくろく #-[ 編集]
知性、感性に優れた人☆
おはようございます☆


理想主義者でありながら、その一方で、上に「超」が付くほどの現実主義者。。。

昨日といい、今日といい、兼好法師のもう一面を知るにつけ、ますます彼に惹かれてしまいますわあ☆

感性だけの人ではない。知性だけの人でもない。
豊かで鋭い感性も、その鋭い知性に裏打ちされたればこそ!な訳で、やはり「ただ者ではない」ですよねぇ。。

要するに『苦労人』なんだと思います。だからこそ、一見矛盾するような事も、分裂することもなく、コントロールする度量があるし、腹が据わっていますし。

淡々としていそうでいてで、その実、根性?というか『気骨』がありますものね☆
2006/09/17(Sun) 12:02 | URL  | マリア #-[ 編集]
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