2012年02月19日 (日) | Edit |
トルストイ民話集(中村白葉訳)「イワンのばか」岩波文庫より

パホームは、泊めてやった旅の百姓から
肥沃な土地がひとりあたり10ディシャティーナ
貰えるという、耳寄りな話を聞いた。

さっそくパホームは、家族とともに
新しい土地に引っ越した。
五人の家族に対して50ディシャティーナの
土地がわりあてられた。

彼の土地は、今までからみると、
ひとりあたり三倍の広さになった。
しかもそれは、よく肥えた土地であった。
生活も前にくらべて、十層倍もよくなった。

トルストイ民話集 イワンのばか 他八篇 (岩波文庫)トルストイ民話集 イワンのばか 他八篇 (岩波文庫)
(1966/01)
トルストイ

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はじめのうちは、
申し分ないような気がしていたが、
だんだん住み馴れるにつれて、
この土地でもまだ狭苦しいような
気がしてきた。

そこで500ディシャティーナの土地を
千ルーブリ借金して
手に入れようとしていたところ
たまたま立ち寄った旅の商人から
耳寄りな話を聞いた。

彼は、バシキール人から
5000ディシャティーナの土地を
わずか千ルーブリで買い取ったというのだ。
しかもその地面は小川に沿っていて
たいへん肥沃な平地だという。

パホームはさっそく、下男を一人連れて旅立った。
七昼夜目に彼らはバシキールの遊牧地に着いた。

村長は言った。
「一日千ルーブリで売ってあげているのです。
つまり、その人が一日に歩いてまわっただけを、
いくらでも差し上げるということに」

「ただ、ひとつ条件がありますーー
もし一日のうちに出発点まで帰ってこられないと、
あなたはふいになるのです」

次の日パホームは日の出とともに歩き始めた。
始めのうちは早くもなく遅くもなく歩いた。
やがてパホームは疲れを覚えかけてきた。
太陽を仰いで見ると、正午だった。

第三の角を曲がったあたりから
さきを急いだ。苦しかったけれども、
ますます足を早めた。
とうとう駆だした。

太陽は地面まで届いて
はしが沈みかけていた。
パホームは倒れこむように
出発点に駈けつけた。

「やあ、えらい!」と村長は叫んだ。
「土地をしっかりおとんなすった!」
パホームの下男が駈けつけ、
彼を抱き起こそうとしたが、彼は死んでいた。

下男はパホームのためにきっかり
三アルシン(約4,5メートル)だけ墓穴を掘った。
そして彼をそこに埋めた。


人にはどれだけの土地がいるか人にはどれだけの土地がいるか
(2006/04/01)
柳川 茂

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コメント
この記事へのコメント
骨舎利になれば一握り
禅の言葉だったか

「起きて半畳、寝て一畳、天下取っても二合半、
骨舎利になれば一握り」

という言葉があります。

たとえ天下取っても一日に
食べれるご飯は二合半位まで。

死んで骨舎利になれば
ただの一握りじゃないか

というもの

このトルストイのお話も同様の
ことを言っているのでしょうかね。

それと人間の欲望の本質についても
みごとに語っているのではないでしょうか。

人間の欲望の本質とは
際限がないということです。

死ぬまで限なく欲しがり続けるのが
われわれ人間の性・・・・・・・・




2012/02/22(Wed) 12:56 | URL  | ろくろく #-[ 編集]
結局
彼に必要だったのは一畳分ほどの土地だけ、という事ですね。
物が増えるほど豊かさと離れて行きますものね。

先日の桜の話も興味深く拝読しました。

桜の季節が待ち遠しいですね。
2012/02/19(Sun) 22:07 | URL  | min #-[ 編集]
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