2010年06月07日 (月) | Edit |
岸田秀著「ふきよせ雑文集」文芸春秋より(5)


満腹したライオンは満ち足りて次に空腹に
なるまで何もしないでいることができるが、

自我を時間のなかに棲まわせなければ
ならない人間は、時間を流れさせるために
未来を持たねばならず、

未来を持つためには未来に目標を設定しなければ
ならず、未来に目標を設定すれば不可逆的に
多かれ少なかれ緊張する。

われわれ人間は
目標をもたないでいることができない。


われわれは、遊びのなかにさえ勝負の要素を
もち込み、勝つという目標を設定して
緊張状態をつくり出す。

ゲームに勝ったところで現実的には
なんのメリットもないが、それでも
われわれは勝ったの負けたのと言って騒ぐ。


ゲーム01

いずれにせよ、人間は緊張する動物であるから、
したがって、緊張からの開放、リラックスを
必要とする。

緊張が人間に特有の現象であれば、
リラックスも人間に特有の現象である。

猫がダラダラ寝そべっているのは、
単にダラダラ寝そべっているだけであって、
リラックスしているのではない。

ネコ01
星が生まれて消えるまで」さんから拝借いたしました。


人間は緊張の状態とリラックスの状態との
あいだを往復する。緊張の状態にあっては
その息苦しさからの開放を希求し、

リラックスの状態にあっては遅かれ早かれ
むなしさを感じ、退屈し、そのうちまた何か
緊張を要することをはじめる。

リラックスの状態とは他者に対して
自分の価値を証明しなくてもいい状態
であるから、その条件さえ満たされれば、

どのようなことでもリラックスのために役立つ。
気心の知れた友人たちと酒を酌み交わすのも
リラックスになるであろう。

「気心の知れた」友人とは
自分の価値をすでに知ってくれていて、
いまさら自分がいかに優秀であるか、

いかに好人物であるか、どのような美点が
あるかなどを示してみせる必要のない
友人である。

弱味や欠点をさらけ出しても自分に対する
評価を下げる心配のない友人である。
そのような友人を前にしては緊張する必要はない。

・・・・・・
酒を呑めば自動的にリラックスできるわけではない。
自分の生殺与奪の権を握っている偉い人と一緒に
酒を呑んでもリラックスできない。

他者の評価の眼を免れるという点では、
自分ひとりになるのがいちばんよいであろう。
しかし、睡眠ほどのリラックスはあるまい。

自我を守ろうとするのが緊張のもとであり、
自我を守っていない点において、
睡眠にまさるものはないからである。


しかし、いずれにせよ、経済的、社会的に
どれほど余裕があっても、精神的に長らく
リラックスしていることができないのが
人間の業である。

過去において他者によってどれほど
高い評価を受けたことがあるとしても、
過去の評価だけでは自我は存立できず、

未来において他者に評価されることを
求めざるを得ず、いや過去において
高い評価を受けたことがあるからこそ、

その高い評価によって成り立った自我を
維持するために同じ水準の評価を
未来においても求めざるを得ず、

しばらくリラックスしたあとでわれわれは、
ふたたび緊張状態に自分を追い込むのである。


ふき寄せ雑文集 (文春文庫)ふき寄せ雑文集 (文春文庫)
(1997/05)
岸田 秀

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テーマ:哲学/倫理学
ジャンル:学問・文化・芸術
コメント
この記事へのコメント
無礼なメール
ひろぼうさん、この手のメール?コメント?
記事?は大変に失礼なものなのです。

コメントではありませんね。当方のブログに
対するコメントが一切ないでしょう。勝手に
自分の伝えたいことだけをおしつけてくる記
事であります。そしてこの手の記事に共通す
るのはそのくせ必ず、アドレスがあるのです。

ひろぼうさんがコメントを書かなかったら即
ゴミ箱入りになっていたものです。

記事の内容以前のところで削除すべき対象の
ものなのですから、君が代がどうのこうの言
われても興味が持てるはずもないのです。

またこの君が代は色々と問題を抱えていて、
君が代の君は誰のことだ?というのがありま
して天皇のことを指しているという説があり
ます。

ろくろく自身は右翼でも左翼でもなく天皇に
ついて嫌いなわけでもありませんが、人気の
ある天皇にあやかって、それを利用しようと
する人が後が断たないのは残念ですね。

それに幸福は、君が代を聞いていればおとず
れるといったものではないと思いますよ。


2010/06/08(Tue) 15:18 | URL  | ろくろく #-[ 編集]
苔のむすまで幸せに

素さん

ありがたいメッセージを心より感謝申し上げますm(_ _)m(;_;)
苔のむすまで幸せに
と言う題名の絵を4年前に描きました。
みんなの幸せを願って2体のお地蔵様が笑いながら寄り添って森の中で苔むして 佇んでいるウグイス色に統一された絵です。森の奥から太陽が丸く輝いています
人生のパートナーとの時の流れと軌跡を苔で表現しました♪

苔は時とまばゆい生命力の鮮やかな黄緑色で日本人を癒やしてくれる大好きな植物です。

もうすぐ、来世をも誓い合った人生のパートナーとの別れが来るかもしれない…

ピッタリのタイミングに励まして頂けましたm(_ _)m

本当にありがとう☆
2010/06/07(Mon) 18:30 | URL  | ひろぼう #2ySkFsy6[ 編集]
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