2008年11月02日 (日) | Edit |
H. サダーティッサ著 桂紹隆・桂宥子訳「ブッダの生涯」立風書房より(53)


ブッダがサーヴァッティーのジェータヴァナ僧院にもどると、
コーサンビーの僧たちが許しを請いにやって来た。

しかし、このときすでに、彼らの評判は地に落ちていて、
コーサラ国王は、僧たちが領内に入るのを許さないとおどかした。

アナータビンディカは、ジェータヴァナ僧院に入れるのをためらった。
ようやく到着したコーサンビーの僧たちは、他の僧から隔離され、
あからさまな軽蔑のまなざしで迎えられた。

しかし、ブッダ自身はまったく悪意を示さず、
コーサラ国王やアナータビンディカに告げた。

「この僧たちは決して悪人ではありません。ただ仲間の間で論争して
いたために、私の言葉に耳を貸さなかっただけです。」


コーサンビーの僧たちは後悔し、恥入りながらブッダの前にやって
来て、足元にひれ伏した。ブッダは彼らを戒めると、簡単な訓話を
与えた。

「口論が自然におさまることを知らない人がいる。もし知っていれば、
仲たがいすることもないだろう。」

ブッダの教えが現実の世間と対峙したもっとも劇的な例は、
ブッダが戦争の勃発を防いだ場合であろう。

サキャ族とコーリヤ族とは、ローヒニー川で国境を接していた。
両国は互いの田畑に水を引くために協力して川にダムを作った。

しかし、一年中でもっとも暑い六月に水量が少なくなり、作物は枯れ
はじめた。コーリヤ族は、自分たちだけが水を使えるように水路を変
えようと言いはじめた。両国の田畑をすべてうるおす十分な水がなか
ったからである。

しかし、サキャ族がこれを許すはずはなかった。緊張が高まり、たが
いに罵りあった。二、三人がなぐり合いをはじめると、ついに両国は
武器を持ち出した。

ここに至ってブッダは争いを知った。この争いに巻き込まれるについ
ては、ブッダは微妙な立場にあった。彼がサキャ族とコーリヤ族の王
女の子どもであったため、両者と縁戚関係にあったからである。

しかし、ブッダは仲裁するのが務めであると考えた。争いの場に近づ
き、縁者たちに、いったいどうしたのかとたずねた。この逸話は、戦
争挑発行為がいかに本来の原因と無関係に勢いを得るかを、皮肉に物
語っている。

いったい何について争っているのかを、ブッダに答えることができる
ものは誰もいなかった。ついにブッダが最下層の奴隷労働者のひとり
にたずねたところ、「原因は水です。」という答えが返ってきた。

そこでブッダは王のところへ行き、たずねた。
「大王よ、水にはどれほどに値打ちがありますか。」
「ほとんどありません。」

「では、あなたの国民の生命には、どれほどの値打ちがありますか。」
「それは測り知れません。」
「では、わずかの水のために、測り知れない価値のある生命を多数犠
牲にするのは正しいことでしょうか。」

ブッダはひき続き両軍に次のように説いた。

「偉大な王たちよ、どうしてこんなことをするのか。もし今日私がここ
にいなければ、諸君は川を血で真っ赤に染めたことであろう。諸君は敵
意と憎しみのうちに暮らしている。

私は憎しみを離れている。諸君は煩悩の病に苦しみながら生きている。
私はそのような病から自由である。諸君は肉体の快楽を追い求めて生き
ている。私はそうではない。

もし幸せに暮らしたいと願うなら、憎しみを抱く人々の中で憎しみを
もたずに暮らしなさい。病に苦しむ人びとの中で、健康に暮らしなさい。
苦悩する人びとの中で、悩まずに暮らしなさい。」



次回につづく


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テーマ:哲学/倫理学
ジャンル:学問・文化・芸術
コメント
この記事へのコメント
私は憎しみを離れている
釈尊が語ることは、見るからに容易いことのように
思えることなのに、凡夫がそれを実現するには
なんとも容易くはないのであります。

本当に大切なことがなになのかが理解されるためには
憎しみを離れた人=覚者でなければならないのだと
思うのです。

「私は憎しみを離れている。
諸君は煩悩の病に苦しみながら生きている。
私はそのような病から自由である。

諸君は肉体の快楽を追い求めて生き
ている。私はそうではない。

もし幸せに暮らしたいと願うなら、
憎しみを抱く人々の中で憎しみをもたずに暮らしなさい。

病に苦しむ人びとの中で、健康に暮らしなさい。
苦悩する人びとの中で、悩まずに暮らしなさい。」



2008/11/02(Sun) 20:28 | URL  | ろくろく #-[ 編集]
仲裁するのが務め
ブッダは仲裁するのが務めであると考えられ、その思いを実行に移された。ここがとても大切なことだと思いました。思っても実行しなければ、何もことは起こらない。やまんばはこれから先、このブッダの実行力を身につけたいと思いました!
「戦争勃発行為が本来の原因と無関係に勢いを得る」^^^^^本当、そうですね。
小さな関係にも、言えることですね^^^^

昨日のろくろくさんのコメント。
「あなたはすでにそれである」
そうでしたね。
光輝く原初にたどりつく。もうそうであるとは頭では理解できました。そして慰められました。安心しました。
しかし、曇りなき心の鏡に辿るために、自分の心の曇りを日々の気づきの中で、コツコツと取り除いていきたいと思いました。
2008/11/02(Sun) 07:30 | URL  | やまんばさん #-[ 編集]
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