2008年10月15日 (水) | Edit |
宇野千代著「天風先生座談」二見書房より (76) 


「お前、ほんとうに仕合せになりたいのか。」
「はい、なりたいと思えばこそ、こうしてやっているんです。」
「それじゃ、すぐ、いまから、仕合せにおなり。」

「えっ、仕合せにはなれませんよ。」
「なれるよ。なれるのに、ならずにいるんだろ。すぐにおなり。
仕合せに。」

「先生無理言ったって、駄目ですよ。あなたのような偉い人なら、
すぐ仕合せになれるかも知れないけれども、私はとてもなれませ
んよ。」


「なれるよ。教えてやれば、わけないけれども、考えなさい。
今日これからだよ。すぐに、今日中には考えつかないかもしれない
けれども、三日、五日、十日、半年、もっとかかるかもしれない。

一年、二年、三年、期限は言わないが、一所懸命とっ組んで、
考えろ。そうすると、お前の心の中の、もう一人のお前が、きっと
ほんとうのことを教えてくれる。

「何ですって。私のもう一人の私がいるんですか。」

「そうだ。お前の心の中に、もう一人、ほんとうのことを知っている
お前がいるんだよ。それを、こうやって考えている中に、いつかは、
ほんとうのことを知っているお前の心の中のもう一人が出て来て、
いろいろなことを考えてくれる。きっとそうなるから、」

「へェ。私はいよいよ不思議なことを聞きますが、私の命の中に、
もう一人、私がいる。」
「いるんだよ。」

そのとき、私は、この人がヨガの哲学者だということを知らないんで
すよ。この人がヨガの哲学者だということも知らないし、ヨガの哲学
がどんなものかも知らない。

日露戦争がすんで、五六年のころだものね。ヨガが世界一の人生哲学
だということは、アメリカのカーリントンが紹介した。この話を、
ちょっとしよう。

エジソンが電波試験をしたときに、急性の神経衰弱にかかった。
ひどい神経衰弱にかかって、医者にかかっても治らない。
そこで、カーリントンが最後に見つけ出したのが、ヨガの哲学。

ラマチャラカという人がアメリカにいましたが、これが契機でもって、
カーリントンが述懐した。アメリカの医師階級を、思想的に正しく向上
せしめるものが、このヨガの哲学よりほかにはいない、といって、それ
から、まさに、ヨガ哲学の学校が三千からアメリカに出来ているわけで
す。

その哲学を知らないから、カイロの宿屋の親爺に、ただ、偉い先生が来
ていると教えてもらった。けれども、何の文化もない山の中で、山犬に
毛の生えたような男から、お前の心の中に、もう一人のお前がいる。

日本の迷信を説くような、新興宗教の言っているようなことを、チェッ、
何言ってやァがんだ、と思ったとき、軽く背中を三つ四つ叩いて、
むこうへ行って、また坐っている。

チェッ、何がもう一人の俺がいてたまるかい。
俺は一人にきまってらァ。



次回につづく


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ジャンル:心と身体
コメント
この記事へのコメント
私の心の中のもう一人の私
これはもうラマナ・マハリシの説く「自己」であり、
「心の本性」のことを述べたものだと思います。

「心の本性」は唯一の不生不滅の存在であると言われ
ています。生きているうちにこの「心の本性」に触れ
ることが出来た人を、悟りを開いた人と言うのだと思
います。

天風先生のように、死病に冒された人、交通事故か何
かで奇跡的に助かった人、マハリシさんのように修行
などで仮死状態を体験した人がまれに「心の本性」触
れることができるのだと思います。


またやまんばさんのように

「私の中にもう一人の私がいる。とても頼りになるベスト
フレンド。何も心配しなくていいんだ。 迷ったら、ただ
そこに帰りさえすればいい。みんなそんなふるさとを持っ
ている」

と想像するだけでも良いと思います。


自分ではどうすることもできない苦痛や病、不運に見舞わ
れた時、それを遠ざけたり抑圧したり、同一化したりする
かわりに、「私の心の中のもう一人の私」を信じ

こり固まった状態を手放し、受け入れ、心を開くことが
出来れば、その瞬間からまったく違った人生が訪れること
になるのではないでしょうか。


2008/10/15(Wed) 19:06 | URL  | ろくろく #-[ 編集]
お前の心の中にもう一人のお前がいる
「もう一人のお前がきっとほんとうのことを教えてくれる」山犬に毛の生えたような男が教えてくれた^^^
私の中にもう一人の私がいる
とても頼りになる。
ベストフレンド^^
何も心配しなくていいんだ。
迷ったら、ただそこに帰りさえすればいい。

みんなそんなふるさとを持っている
それは死をも越えて存在している

そういうことなのでしょうか^^


ろくろくさん、山村慕鳥の詩の紹介、ありがとうございました。
単調に繰り返される言葉のなかに、ひょいと異質の言葉が入る。
その繰り返しが三回。


残像に青と黄に真ッ二つに分かれた空間・遠くから聞こえてくる麦笛、時折空高く力強くさえずる数羽のひばり、白い月
当たり前の景色が当たり前でないほど冴え渡る覚醒された作家の目。

とてもきもちがよくなりました。
ありがとうございました。
2008/10/15(Wed) 08:56 | URL  | やまんばさん #-[ 編集]
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