2008年10月14日 (火) | Edit |
宇野千代著「天風先生座談」二見書房より (75) 


「病気が治ったら、幸福だと思うかい。」
「そう思います。」
「そういう気持では、病気が治っても、ほんとうの幸福にはなれない。」

「なれませんか。」
「いい気分に仕合せになりたいだろう。」
「なりたいですよ。なりたいから、あなたがついて来いと言ったから、
来たんです。考えろというから、考えたくもないけれども、

ほかに仕事がないからやっているだけの話です。こんなことするのも、
自分の病だけでもって、考えたこともないのに、考えるよりしようがない
から、考えています。」

「考えているのかい。」
「考えているつもりです。」
「つもりだけれども、ちっとも考えてはいない。相変わらず、痛いの、
苦しいの。」

「それはそうです。朝から晩まで、私の頭の中にあるのは、苦しいのと、
辛いのだけです。」


「それでは、仕合せになれないな。」
「なれないでしょうか。」
「なれない。」

「せめて、少しでも、気分が重くない状態になったら、仕合せになれる
と思うんですけど。」

「そうなっても、なれないな。」
「それじゃ、あれですか。私は一生ここにいても、幸福になれないんで
すか。」

「どこにいても、いまのような気持じゃ、幸福になれないな。」
「なれないですか。」
「なれない。」

「それじゃ、私、帰りたいです。」
「どこへ。」
「生まれ故郷へ。」

「ここにいても、生まれ故郷へ帰れるじゃないか。ここにいても、
死ねば生まれ故郷へ帰れる。」

「私は自分の生まれ故郷に帰りたいんです。」
「人間は誰でも、一番しまいに、一番最初の生まれ故郷に帰れるのだ。」
そう言われたときに、私はそのことがわからなかった。」

後になって私は、禅坊主の教えの中に、こういう言葉があったのを思い
出した。ああ、あのとき、あのカリアッパ先生はこう言ったんだな、と
思った。「闇の夜に、鳴かぬ鴉の声聞けば、生まれぬさきの父ぞ恋しき。」

生まれ故郷というのは、これだな。あなた方。何市何町に生まれたのが、
生まれ故郷だと思うだろうけれども、一番はじめはそれじゃあない。

この宇宙の中の、見えない気体の中にあなた方がいたのが、父から母と
会って、あなた方が出てきたんだけれども、一番さきの故郷のことは、
闇の夜に、鳴かぬ鴉の声聞けば、生まれぬさきの父ぞ恋しき、というとこ
ろが、生まれ故郷。

だからね、ここにいても、故郷に帰りたいと言ったら、死んでしまえば
生まれ故郷に行かれるんだ、と言いたかったんでしょうな。

「お前、ほんとうに仕合せになりたいのか。」
「はい、なりたいと思えばこそ、こうしてやっているんです。」
「それじゃ、すぐ、いまから、仕合せにおなり。」



次回につづく


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テーマ:モノの見方、考え方。
ジャンル:心と身体
コメント
この記事へのコメント
山村暮鳥
ネットサーフィンをしているうちに面白い詩を
みつけましたのでどうぞ~


風 景
     純銀もざいく

いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
かすかなるむぎぶえ
いちめんのなのはな

いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
ひばりのおしやべり
いちめんのなのはな

いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
やめるはひるのつき
いちめんのなのはな。



山村暮鳥「聖三稜玻璃」より

http://www.aozora.gr.jp/cards/000136/files/731.html#1



2008/10/14(Tue) 18:51 | URL  | ろくろく #-[ 編集]
死ねば生まれ故郷へ帰れる
ここで言う「生まれ故郷」とは
昨夜のコメントでも触れました「心の本性」
のことを言っているのだと思いますがいかがでしょう。

バルド・トドゥル(チベットの死者の書)では
ほとんどの人は生きている内に「心の本性」に
触れることができないといいます。

「心の本性」を悟ることのできない我々凡夫にとって
稀有の機会が死ぬときに巡ってくるのだといいます。
死の間際に悟りのチャンスがあるというのです。

ひょっとしたらカリアッパ先生は、このことを
仰っていたのではないでしょうか。


2008/10/14(Tue) 18:47 | URL  | ろくろく #-[ 編集]
生まれ故郷に帰る
安心できる言葉でした。
ここで生きて、命が尽きたら、ふるさとへ帰る。

今日の言葉にも書かれてある。
「人生は泡 夢 水に映る影 蜃気楼のようなもの・・・ポイントは蜃気楼にしがみつかないこと 水に流すこと 放棄すること

命が尽きるまでは、夢を行動に移して遊ぼう

いっぱい遊んで、夕方になると、夢中になっていたものを、ポイッと捨てて、お母さんとおうちに帰ったように、ふるさとへ帰ろう。
2008/10/14(Tue) 07:00 | URL  | やまんばさん #-[ 編集]
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