2008年10月01日 (水) | Edit |
H. サダーティッサ著 桂紹隆・桂宥子訳「ブッダの生涯」立風書房より(42)


従弟のデーヴァダッタと傷ついた白鳥について言い争った子供の頃
から、ガウタマは、すべての生き物を憐れむ人物として経典に描か
れている。

このような慈悲心は「すべては苦である」という教えと表裏一体を
なす。確かにブッダの教えには、慈悲心あふれる行為の例がかずか
ずみられる。

ある日、ブッダは侍者のアーナンダを伴ってある僧院を訪れ、
病気で寝ている僧の部屋に入った。僧は下痢で苦しんでいた。
苦痛がひどく、不潔であったが、誰も彼のことなど気にかけ
なかった。ブッダはたずねた。

「どうして他の僧たちは、君の世話をしないのか。」

「私が皆の世話をしないからです。」


ブッダはアーナンダを呼び、いっしょに病んだ僧の看病をはじめた。
湯を沸かして彼の身体を洗うと、汚れたベッドから清潔な寝床に
移してやった。

それが終わると、ブッダは他の僧たちを集めて、病気で苦しんで
いる者の世話をするように説いた。
「病人の世話をするのは、私の世話をするのと同じことだ。」

またあるとき、ジェータヴァナ僧院の一人の僧が皮膚病にかかり、
身体じゅうにできものができた。そのできものは、つぶれるとひど
くただれて、着物を汚した。

とても醜い状態になったので、仲間の僧たちはとうとう彼を僧院から
運び出して、野外に捨てた。このことを聞いて、ブッダはふたたび
アーナンダとともに彼の介抱に出かけた。

今度は他の僧たちもブッダを手伝いに来て、自分たちで湯をわかし、
その僧の着物を洗い、居心地よくしてやった。

また、動物をいじめる子どもたちにブッダが注意する話もある。
あるとき、ブッダはほとんど水のなくなった貯水池で、男の子たちが
魚をいじめて遊んでいるのに出会った。また別の機会に、男の子たち
が蛇を棒でいじめているのを見つけた。

経典によると、ブッダはこれらに機会に、良きにつけ悪しきにつけ、
人は自分の行為の責任を問われるという道徳上の因果律について説明
したとされる。

そして同時に、人間の心理に通じた実践家であったブッダは、親や教
師がわがままで乱暴な子どもをしつけるように、「誰かが君たちにそ
んなことをしたら、どう思うかね。」と、子どもたちの善良さに訴え
たようである。

ブッダの教えの基本は実際性と良識である。
この両者がおそらく当時も今も、他の出家者の修行から仏教をもっと
も明確に区別する特色であろう。

他の出家者、隠者、ヨーガの修行者などは、厳格な自己否定と通常の
人間活動からの隠遁、つまり〈サンニャーサ〉の立場をとるが、それ
こそはガウタマ自身が六年間従事した後に放棄したものであった。

良識は〈中道〉の基礎である。そして中道とは、束縛や執着になりか
ねない特定の行動様式や考えに偏らないことを本来意味している。

もっとも、ブッダの説く中庸は定義しがたく、多くの信徒にとって、
なかなか理解できないものであった。というのも、宗教生活を選んだ
人びとは、全身全霊で修行にうちこみ、中途半端なやり方にがまんで
きない傾向をもつからである。



次回につづく


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テーマ:仏教・佛教
ジャンル:学問・文化・芸術
コメント
この記事へのコメント
ただ見守ること
昨日のさとりのコメント、理解していただいてよかったです。

「理解できなければ、理解できないという意識に安らぐ、それがさとりである」
のところですね~


自分の身体、心、呼吸、思考、行動、言葉をあるがままに観察すること、
苦しみや悲しみ、喜びや怒り、不安や嫉妬を何かに変えようとせず、
良いとか悪いとか判断せず、ただ見守ること



2008/10/01(Wed) 19:39 | URL  | ろくろく #-[ 編集]
私が皆の世話をしないからです・・
下痢で苦しんでいた僧はブッダに「どうして皆は、君の世話をしないのか?」と問われたときに「自分がみなの世話をしないからです」と答えた。嘆き悲しみ、恨みを口にせず、そうきちんと答えた。えらいなあ・・さぞかし痛かったでしょうに・・・痛みのない時には言えるけど、痛みがあるときに、よく答えられたと感心しました。

今日、一番印象に残った言葉は、
「病人の世話をするのは、私の世話をするのと同じことだ」というところです。そこだけが光ってみえるように感じました。

ろくろくさん、昨日のコメント、よくわかりました。
それと、「理解できなければ、理解できないという意識に安らぐ、それがさとりである」と書かれてあったことに、やまんばは大いに安らぎました。きちんと答えてくださり、ありがとうございました。
2008/10/01(Wed) 07:21 | URL  | やまんばさん #-[ 編集]
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