2006年04月12日 (水) | Edit |
五木 寛之 著「他力」講談社文庫より (7)


〈諦め〉という言葉には、
非常にネガティブなイメージがあります。

しかし、諦めるということは
本当にわるいことなのだろうか。

諦めるということは、
受身で弱々しいことのように思われますが、

〈諦める〉ということは、
じつは「明らかに究める」
ということです。


物事を明らかにし、その本質を究めること。
勇気を持って真実を見極め、それを認めることが、
本当の〈諦める〉ということなのです。

たとえば、親鸞は中世で最も強く
〈諦める〉ことに到達した人物なのです。
彼は何を諦めたのか。

それは、自分の欲望や煩悩から
個人の自力ではとうてい
解脱することはできない、
ということです。

親鸞は二十九歳まで厳しい修行を行いました。
しかしどんなに修行を積んでも、

自分の中に邪心や欲望の火が燃え盛るのを
どうしても抑えることができなかった。
そして、彼は悟るのです。

「自力では悟れぬものと悟りたり」

つまり、親鸞は、自分の力で
解脱することはできないと諦めたわけです。


親鸞が開いた浄土真宗は、
煩悩を捨てよとは教えない
〈他力〉の思想です。

そこがほかの宗派とは大きく違うところです。
いや、インドや中国の仏教とも
はっきり違うのです。

それは本当の意味での諦めの宗教です。

諦めきったところから、
物事が明らかになり、
それを究めきったところに真実がある。

そこに本当の意味での
静かな強さが生まれます。

人間は、自分が患っている病気や困難に打ち勝つぞ、
と思っただけでは、
その状況を克服することはできません。

むしろ、人間の命は有限であると、
諦めることです。

そして、いま、生きていることへの
感謝の気持ちを持ち、
生きているこの瞬間を十分に味わう。

そういうしなやかな心を持つことが、
人間が直面する危機に際して、
人間をサバイバルさせる大きな力になると思うのです。

しなやかな心は、死と対決して、
それを否定する中からは生まれません。

死を見つめることを通して、
生を見つめ、それを迎え入れる中から
生まれてくるものなのです。

危機の中で人間を支えるのは、
じつはこうしたしなやかな心では
ないでしょうか。

強くあるだけが
生きていく術ではありません。


↓↓↓あなたの応援↓↓↓(1日1クリック)お願いします。

にほんブログ村 哲学ブログへ人気blogランキング精神世界 ランキング

スポンサーサイト
テーマ:仏教学
ジャンル:学問・文化・芸術
コメント
この記事へのコメント
はじめまして!
はじめまして!
ひょんな事から こちらに飛んで参りました。
よ~くお勉強にさせて頂きました。
2006/06/17(Sat) 19:31 | URL  | neorin #u2lyCPR2[ 編集]
四百四病を抱えた存在
しんでれらsan

にんげんは四百四病を抱えてうまれてくるといわれます。
つまりにんげんは本来、病気と共にある存在といえます。
禅では病気のことを「不安」というそうです。
不安というのは、体調が不安定になり、
バランスがくずれて、四百四病が表に出たということ。
病気は悪だから、切除するしかない、
と考えるのではなく、
病気を受け入れて共に生きていく、
といった考え方もたいせつです。

それになにか病気のある人のほうが
からだにいつも注意をはらうので、
健康な人よりもかえって長生きするとよく言われますしね。
病気と仲良くしていると
いつのまにか奇跡的に治ることもあるかもしれません。


2006/04/14(Fri) 14:17 | URL  | ろくろく #-[ 編集]
私は4年以上慢性病に苦しんできました。
これさえ治れば、あれもできるこれもできると
治すために、あらゆる努力をしました。
でも治りません。

自分の病気に打ち勝つと思っただけでは
その状況を克服できないと聞いた時
ビックリしました。

諦めることが、
病気と仲良くすることが、
一番治す力を産み出すなんて!!
ちょっとにわかには信じられません。

そのうえ、なかなか諦めるのは難しいです。
でも、諦めるという中に確かに何か力強さも
感じるので、できる範囲でやってみます。

2006/04/14(Fri) 08:47 | URL  | しんでれら #-[ 編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2006/04/13(Thu) 17:50 |   |  #[ 編集]
欲望を消す漂白剤
ろくろくの場合は
「今日で自分の一生が終わる、それでいいのか?」
とおのれに問う時、欲望を消すというよりは、
欲望をハッキリさせる効果があります。
美味いラーメンを今生の別れに食べておこう、とかね。


2006/04/13(Thu) 16:22 | URL  | ろくろく #-[ 編集]
人間の命は有限であること。
あまりにもあたりまえでありながら、自分の中でうやむやになっていること。やまんばや、今日紙に書いて、トイレの壁に貼り、決して忘れないようにして生きてゆきます。この言葉、欲望を消す漂白剤みたいですね。
2006/04/13(Thu) 09:44 | URL  | やまんばさん #-[ 編集]
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック