2008年09月19日 (金) | Edit |
宇野千代著「天風先生座談」二見書房より (70)


それから、さらに、カーリントンに会った。

そうしたら、この人は、「偉いね、あんたは、アメリカにも、
七十、八十の爺さん婆さんはいくらでもいるけれども。ね。

朝から晩まで、金だ、品物だ。金だ、品物だ。お前は偉いよ。
三十やそこいらでもって、心のことを考えるなんて、何て
尊いんだ。お前は。ああ、今日は尊い人に会った。ああ、尊い。」

何のことだか、ちっともわからない。おだてられて、ほいほい
帰されちゃった。


それから更にロンドンで、H・アディントン・ブリュースに会った。
こいつはまた、のっけから、こういうんです。「考えるな、考える
な。忘れちまえばいいんだ。忘れちまえ。苦しかろうと痛かろうと、
そんなこと考えるな。忘れちまうのが一番いいんだ。」

何だか、まるでね、ごみでも捨てるようなことを言いやがる。
「だって、自分の身の内に感ずる痛みや辛さは、忘れられません。

「そう言っているからいけないんだ。忘れちゃえ、忘れちゃえ。何
でもいいから、忘れるんだ。その内忘れられるだろう。さよなら、」
何だい、こりゃいったい。

一番私に親切に、真面目な説明をしてくれたのは、世界一の人生哲
学者である、ドイツのドリュースです。「あなたが考えていること
の問題はね、人類にとって重大な問題だ。

あなたがさきに考えても、私がさきに考えても、どれだけ世界人類
の幸福になるかわからないよ。考えようよ。いっしょに。大いに考
えようよ。」あれッ、世界一の人生哲学者が、この問題を知らない
のか、と思って、私はがっかりしちゃった。

……
いずれにしても、世界屈指の学者が、こういう自分の、現在の病い
に苦しめられている心の苦しみは取れないにしても、軽くする方法
さえも知らない。本当の失望、本当の落胆というものを、そのとき
始めて味わった。

それまでは、いくぶん心に望みがあった。いよいよ、明日ドリュー
スに会おう。紹介してくれた人は誰あろう、世界的な名女優サラ・
ベルナール。

このサラ・ベルナールの紹介で会わせると言われた前の晩は、一睡
もしなかった、そうして、がっかりする筈です、いまの答えだ。

この扉、あけて飛び込めば助かると思って飛び込んだら、
底の知れない奈落、千仭の谷だったと同じような気持。



次回につづく


↓↓↓あなたの応援↓↓↓(1日1クリック)お願いします。

にほんブログ村 哲学ブログへ人気blogランキング精神世界 ランキング



スポンサーサイト
テーマ:モノの見方、考え方。
ジャンル:心と身体
コメント
この記事へのコメント
夢の家 追伸
夢の家/マリーナ・アブラモヴィッチ

下のアドレス3つのうち、1と2はかなり下のほうに
夢の家の棺ならぬベッド?の写真が登場します。
是非ご覧ください。m(u_u)m

http://www.fromkiyama.com/dreamhouse.htm
http://www.yscompany.com/tomosaku/travel/0608_earthart.html
http://www.echigo-tsumari.jp/art/?id=320.html



2008/09/19(Fri) 19:31 | URL  | ろくろく #-[ 編集]
夢の家
やまんばさんご心配いりません。今回のやまんばさんの文章、
やまんばさんが嫌がって書いているとは思いませんでしたよ。
たしかに裁判官みたいになっていたかもしれませんね。
ごめんなさい。


ところでサラ・ベルナールには、ちょっと変わった習慣があったようです。
彼女は寝るときはいつも棺の中で寝ていたのだそうです。
引越すときも必ず棺を一緒に運んだといいます。

それで思い出したのがマリーナ・アブラモヴィッチの夢の家。
新潟の古い民家を改装した宿泊施設で、水晶の枕が付いた木製のベッド
はまさに棺のよう。これに作家がデザインしたパジャマを着て眠る。
翌朝見た夢を書き残し「夢の本」を編んでいくという。

一度行ってみたいですね。
私は以前から棺に寝てみたいと思っていまして、私の気持ちと同じ様な人が
いるもんですね。



夢の家/マリーナ・アブラモヴィッチ
http://www.fromkiyama.com/dreamhouse.htm
http://www.yscompany.com/tomosaku/travel/0608_earthart.html
http://www.echigo-tsumari.jp/art/?id=320.html



ジョルジュ・クラレン 「サラ・ベルナールの肖像」
http://hw001.gate01.com/tukiyodori/pic28.jpg



2008/09/19(Fri) 19:23 | URL  | ろくろく #-[ 編集]
追加です。
昨日のろくろくさんのコメント。やまんばは嫌がっているのではありません。むしろ楽しんでいるのです。別段、私個人にコメントをいただいたとも思っていません^^やまんばはすぐにイメージして楽しむようです。今後ともろくろくさんの意見を聞きたいと思っていますので、どうぞ、よろしくお願いいたします。
2008/09/19(Fri) 08:57 | URL  | やまんばさん #-[ 編集]
おはようございます。
昨日のろくろくさんのコメントは、裁判所に呼び出されたやまんばがろくろくさんという裁判官から、「あなたは物事を、自分がこうあってほしいとか、倫理や道徳、はては先入観までもちだして、事実をみておられません。今後はなるだけ、そのことが正しいかどうかではなく、事実はどうかということを、きちんと見て、あるがままに受け入れるようつとめられたほうがよろしいかと思います」と言われたような気がしました^^。

サラ・ベルナール・・・・・どこかで聞いたことがある。(調べる)あ~そうか!ミュシャのポスターに出てきた女優さんだわ。天風先生はその方の家に居候したことがあると書かれていますね。どんな偉い人にであっても、ピントのはずれた答えが返ってくるだけ・・若い天風先生はさぞかしがっかりされたことでしょう。

2008/09/19(Fri) 07:27 | URL  | やまんばさん #-[ 編集]
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック